6戸アパート内見。買付証明を握りしめた右手が止まる瞬間

物件視察ファイル

6戸アパートを見に行った。
掲載翌日で、すでに問い合わせ10件以上。
「これは出遅れたか…」と思いつつも、内見予約はなんと私が一番。
しかも、特約なしの買付証明書を持参。
──そう、完全に“買う気MAXモード”である。

現地に着くと、見た目は悪くない。
3階建ての鉄骨で、外観もまだまだイケる。
「うん、これならリフォーム次第でいけるぞ」と鼻息荒く室内をチェック。
ただ、なにかが引っかかる。
そう、接道だ。

仲介さんが言う。
「ここ、公衆道路です。再建築不可なんですよ。」

……公衆道路?

え、道路じゃないの?
「公衆」ってついてるから、むしろ“みんなの道路”じゃないの?と心の中でツッコむ。

気になってチャッピー(ChatGPT)に聞いてみた。
すぐに返ってきた答えがこちら。

「公衆道路」というのは、一見“道路っぽい”けれど、建築基準法上の“道路(第42条道路)”として認定されていない通路。
つまり、建築基準法第43条の「接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接する)」を満たせないため、再建築ができない(建て替え・増築が不可)

うわぁ……出た、再建築不可。
さっきまで買付証明を振りかざしていた右手が、ゆっくりと下がる。
なんなら少し震えていた。

築30年の3階建て鉄骨。
これ、15年後にどうするの?
解体費いくら? 土地として売れるの?
それでいて、2/6入居の現状で融資つく?
──脳内のそろばんが、ものすごい速度で弾かれ始めた。

そして思う。
「出口が見えない物件は、入る前に迷路。」

確かに、表面利回りは魅力的。
だがそれは、トラップカードのようなものだった。
あのまま勢いで買付を出していたら、後で“再建築不可の沼”にハマっていたかもしれない。

仲介さんに言う。
「すみません、持ち帰って検討します」

あの瞬間の「買う気MAX」から「転進」までの落差は、ジェットコースターより速かった。
でもこれが不動産投資の現実。
気持ちだけで突っ走ると、崖の先には“公衆道路(っぽいもの)”が待っているのだ。

帰りの車内で、自分に言い聞かせた。
「買えなかったんじゃない、見極めたんだ」と。
……ちょっとだけ強がりを添えて。

コメント

タイトルとURLをコピーしました