融資NG、そして「融資特約なし」の決済へ

7号物件

勤め人の昼休み。

いつも通りの食事を終え、午後の仕事に向けて少しばかりの休息を取っていた、その時。

スマホが震えた。

画面には、融資を打診していた信金の担当者様の名前。

「ついに承認か!」

意気揚々と電話に出た私を待っていたのは、無情な一言だった。

「……誠に残念ながら、今回はご希望に添いかねる結果となりました」

……。

…………。

一瞬、思考が止まった。

審査に落ちること自体は、不動産賃貸業をしていれば珍しいことではない。

だが、今回は事情が違う。

今回の物件、契約条件は「融資特約なし」。

そう、私は逃げ場のない背水の陣を自ら敷いていたのだ。

融資がダメなら、自己資金での現金決済だ。

平和だった昼休みは、突如として「1分1秒を争う資金調達バトル」の場へと変貌した。

「マズイ、これはマジでマズイ……」

震える手で操作したのは、職場のPCではない。

自分のスマホだ。

実は、職場のスマホから証券口座にログインするなんて、これが初めてのこと。

普段は自宅のPCで、ゆったり操作していた。

しかし、そんな悠長なことは言っていられない。

「ログインパスワード、何だったっけ……」と焦りながらも、なんとかログイン。

狙うは、コツコツと積み立ててきた「新NISA」。

本来なら長期保有すべきものだが、背に腹は代えられない。

職場の隅っこで、祈るような気持ちで全売却のボタンをポチッ。

さらば、私の非課税枠。

さらば、複利の魔法。

しかし、現実は甘くない。

即解約しても、実際に現金化されて口座に振り込まれるまでには、約1週間のタイムラグがある。

カレンダーを睨みつけ、脳内計算機をフル回転させる。

次にすべきは、仲介さんへの連絡だ。

「あの……信金さん、ダメでした。……はい、ダメだったんです」

「でも!自己資金で決済します!」

当初予定していた決済日には間に合わない。

その事実を正直に伝え、日程の延期を懇願した。

仲介さんの「……承知いたしました。売主様にも調整してみます」という言葉に、ようやく細い蜘蛛の糸を掴んだような心地がした。

だが、これで終わりではない。

決済が終われば、私の銀行残高は「ほぼゼロ」になる。

修繕リスクを考えると、このままでは丸裸で戦場に立つようなものだ。

そこで、これから即座に動くのが「マル経融資」の申請だ。

いわゆる、決済後に融資を引く「バックファイナンス」。

これから書類を揃え、申請の準備に入る。

一時的に現金はカツカツになるけれど、マル経さえ通れば、なんとか息を吹き返せるはず。

ふと我に返り、思う。

「なんて綱渡りだ。大丈夫か、自分?」

客観的に見れば、崖っぷちで全力疾走しているような状況。

でも、不思議なもので、心のどこかで「これを乗り越えれば、また一つ強くなれる」なんて思っている自分もいる。

不動産活動もそうだが、「最初だけちょっと大変な決断」は、だいたい後で自分を助けてくれる。

さて。

仲介さんへの連絡も済み、方針は決まった。

あとは、NISAの現金化を進め、マル経の申請に全力を注ぐだけだ。

いつ頃、平穏な日々が戻るだろうか。

数週間後か、はたまた忘れた頃か。

まあいい。

今は目の前の決済を、確実に、静かに、遂行するだけなのだから。

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