たまには、勤め人仕事を家に持ち帰る。
いや、「たまには」と言いながら、年に何度かはこうなる。
本当はなるべく定時で帰って、不動産賃貸業の時間を確保したい。
副業を始めてからというもの、人生の優先順位が変わったのだ。
以前は「キリのいいところまでやって帰ろう」だったが、
今は「キリが悪くても帰ろう」。
自分の仕事より、自分の未来を優先している。
ただ──当然ながら、そのツケは回ってくる。
中途半端に残した仕事は、静かに山のように積み上がる。
見えないところでちりつもが進み、ある日突然、帳尻合わせデーがやってくる。
今日がまさにそれ。
テーブルでノートパソコンを広げると、
家族が「え、今から仕事?」とちょっと驚いた顔をする。
「いや、ちょっとだけ」と笑ってごまかす。
でも、“ちょっと”で終わった試しは、たぶん一度もない。
昼間は勤め人、夜は大家。
最近ではこの切り替えがだんだん自然になってきた。
昼間の仕事で得た知識や経験が、不動産にも活きるし、
逆に賃貸業で身につけた段取り力や交渉力が、本業でも役立つ。
両方を行き来しているうちに、境界線はあいまいになってきた。
キーボードを叩く音が響く夜。
資料をまとめながら、ふと窓の外を見やる。
「明日の帰りは現場寄れるかな」
そんなことを考えつつ、勤め人のタスクを片付ける。
少し大変ではあるけれど、このリズムが嫌いじゃない。
やりくりしながらも、どちらの歯車も動いている感じがする。
おそらく、これが“サラリーマン兼大家”のリアルな日常だ。
そろそろゴールが見えてきた。
あとひと息。
今日を乗り切れば、明日はまた物件のことに時間を使える。
──そう思えば、夜の仕事も悪くない。
こうしてまた、静かな夜が一つ過ぎていく。
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