資源ごみじゃないのに鏡を運んだ愚行

5号物件

朝活──それは、勤め人大家に残された貴重な自由時間。
今日も私は鼻息荒く5号物件へ向かい、「よし、ゴミ出してスッキリするぞ」と意気揚々とスタートした。

今日のミッションは“鏡の処分”。
洗面台を交換したときに外した、あのデカいやつだ。
たしか今日は資源ごみの日。蛍光灯と電球もポケットにねじ込み、鏡は3面鏡のうち2枚を両手に抱えた。
(残りの1枚は浴室でセカンドライフを歩んでもらうことにした。)

しかし、ここで大問題。

回収場所が……ない。
いくら歩いても、見慣れたカゴが置かれていない。

「あれ? おかしいな? 今日は資源……だよな?」

自分の行動に自信がなくなり、そっと脳内カレンダーをめくる。
その瞬間、悟った。

――今日、資源ごみじゃないわ。

そう、自治体ごとに回収日もルールも違う。当たり前といえば当たり前なのだが、大家業を始めてから初めて知った“生活の授業”。
私の物件がある自治体は3つ。
そのうち、大きな鏡を回収してくれるのは5号物件のある自治体だけ。

しかも、鏡の回収スポットはいつもの“可燃ごみエリア”よりちょっと遠いという絶妙な距離設定。
私は片手に蛍光灯、ポケットに電球2個、そして両手いっぱいの鏡2枚。
この恰好で歩いている時点で、もはや変質者一歩手前だ。

ようやく辿り着いた先に回収場所がないのだから、もう笑うしかない。

「いや、これ……間違えたんだな」

認めた瞬間、急に腕が重くなる。
結局、持ってきた鏡2枚を、そのまま持ち帰るハメに。
物件までの帰り道は、まるで人生の敗北者が歩くスローモーションロードだ。

物件の玄関に鏡を置いたとたん、心の中でつぶやいた。

ばかばかしい。曜日くらいちゃんと確認しようよ。

そう、今日の学びはこれに尽きる。

大家の仕事は掃除・修理・交渉なんてことだけじゃない。
“ゴミの曜日を把握する”という、生活の基礎に立ち返らされることもあるのだ。

次回はちゃんと回収日を確認してから行く。スマホのカレンダーにも登録しておこう。
鏡を持って、もう一度朝活へ向かうためだ。これが大家のリアル。

そして――今日の筋肉痛は、全部鏡のせいだ。

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