ここ静岡でも雪が積もった。
この一文だけで、静岡県民なら「えっ、マジで?」とその異状事態が伝わるはずだ。
めったに降らない、ましてや積もらないこの地で、先週末は景色が白く染まった。
そんな中、私のスマホが震えた。
画面には見知らぬ電話番号。通称「シラ電」からの着信だ。嫌な予感しかしない。
大家をしていれば、知らない番号からの電話はだいたい「事件」の合図だ。
おそるおそる、通話ボタンを押した。
「もしもし、5号物件の隣の者ですが……」
声の主は、5号物件の親切な隣人さんだった。
内容はこうだ。
「お宅の水道から、水がずっと流れ続けていますよ」
ヒィィィ!心臓が跳ね上がった。
5号物件で、絶賛「噴水ショー」が開催されているらしい。
驚いたのは、その隣人さんが私の番号を知っていたことだ。
挨拶回りをしたのは、もう1年以上も前のこと。その時にお渡しした名刺を、ずっと大切に持っていてくれたのだ。
ありがたい。
本当に、ありがたい。
静岡県民の温かさが、雪で冷えた心に染み渡る。
名刺一枚が、時を超えて私を救ってくれた。
ただ、大きな問題があった。
その時、私は「勤め人仕事」の真っ最中だったのだ。
現場へ急行することはできない。
しかし、水は刻一刻と流れ続けている。
私は、究極の選択を迫られた。
「……大変申し訳ありません! もしよろしければ、元栓を締めてもらえるでしょうか?」
我ながら、図々しいにもほどがある。
隣人さんに、あつかましくも作業をお願いしてしまった。
しかし、隣人さんは快く引き受けてくれた。
「いいよ、やっておくよ」
その一言で、無事に漏水はおさまった。
後日、私は現地へ向かった。
そこには、無残にもパッカーンと割れた塩ビ管の姿があった。
見事な割れっぷりだ。
幸いだったのは、漏水したのが屋外の水道だったことだ。
家の中への浸水はなく、基礎が濡れるほどの被害もなかった。



最悪の事態は免れた。
不幸中の幸い、とはまさにこのことだ。
「とりあえず、自分で応急処置しようか……」
そんな考えが頭をよぎった。
いつものDIY精神だ。
しかし、ふと思い立って保険屋さんに電話してみた。
「あ、それなら保険適用になりますよ」
神降臨。
またしても、ありがたい。
これなら無理してDIYせずとも、プロの手を借りることができる。
しっかり直してもらうのが一番だ。
とはいえ、ここからがまた一苦労だった。
この近辺の水道業者の知り合いがいない。
私は「iタウンページ」という、少し懐かしい名前のアプリを立ち上げた。
1件目、繋がらず。
2件目、繋がらず。
3件目で、ようやく電話が繋がった。
業者さんは電話口で、バタバタした様子でこう言った。
「凍結の問い合わせがすごくて、もう大変ですよ!」
そりゃそうだ。
ここ静岡で雪が積もることなんて、滅多にない。
多くの人は、水道管の凍結対策なんて考えてもいない。
町中の水道管が、一斉に悲鳴を上げているのだ。
5号物件は、幸いにも現在「空室」だ。
入居者さんに不便をかけるわけではない。
「急ぎませんから、そちらの都合でいいですよ」
そう伝えて、連絡を待つことにした。
それから2日後。
「今から現地に向かえます!」と連絡が入った。
たまたま、私の勤め人仕事が休みの日だった。
なんというタイミングの良さ。
私は、急ぎ現地へ向かった。
業者さんと合流し、現場を確認する。
「ここはこうして、あーして……」
プロの視点で修理の段取りを相談し、見積もりをいただく。
その見積書を、そのままスマホで保険屋さんへ送付した。
雪が降り、管が割れ、隣人さんに助けられ、保険で直す。
まさに、連携プレーの連続だ。
サラリーマンをしながら、大家業をこなす。
トラブルは突然やってくる。
でも、人の縁と保険があれば、なんとかなるものだ。
そんな大家業をこなしている、今日このごろだ。

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